働き方改革について
働き方改革を始める背景:
働き方改革とは時間外労働、有給休暇、非正規の待遇差といった問題を解決するための施策です。働き方改革が実施された背景には、少子高齢化によって働く人が少なくなる上、今の日本は働きにくい環境になっているので、なんとか解消していかなければ国が立ち行かなくなる。
政府・国会の動き:
2015年(平成27年)の第3次安倍内閣では、4月3日、時間外労働割増賃金の削減・年次有給休暇の確実な取得・フレックスタイム制見直し・企画業務型裁量労働制見直し・高度プロフェッショナル制度創設などを内容とする労働基準法等改正案提出された。
2018年(平成30年)1月22日、第196回国会における内閣総理大臣安倍晋三の施政方針演説では、働き方改革関連法案は同国会の最重要法案の一つと位置づけられ、閣法として同国会に提出された。
6月29日、参議院本会議で自由民主党・公明党・日本維新の会・希望の党・無所属クラブの賛成多数で可決され成立。同年7月6日に公布され、翌2019年(平成31年)4月1日に順次施行される。
働き方関連法案:
日本法における8本の労働法の改正を行うための法律である。
- 労働基準法
- 労働安全衛生法
- 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法
- じん肺法
- 雇用対策法
- 労働契約法
- 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)
主な新たな規制:
- 時間外労働の上限は、月45時間かつ年360時間が原則。繁忙期には単月で休日労働を含み100時間未満で、月45時間の原則を上回るのは年6回までの年720時間の範囲内で、三六協定に定めた限度時間の延長ができる。違反企業や労務担当者には、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科す。
⁻ 10日以上の年次有給休暇が与えられる労働者には、本人の希望を踏まえ、このうち時季を指定して5日間以上を取得させることを企業に義務付ける。
⁻ 同一労働同一賃金の推進
・客観的記録ーー
労働安全衛生法が改正され、2019年4月1日からは原則としてすべての使用者に対し、従業員の労働時間を客観的に把握することが義務付けられました。
これまでは出勤簿に何を記載すべきか、どのような基準に基づいて勤怠把握を行うべきかが法律上明記されていないから以下に変更
2.労働時間を客観的に把握する方法
客観的で適切な方法で労働時間を把握するためには、具体的に何をすればいいのでしょうか。
ここからは、厚生労働省が発表しているガイドラインに照らし合わせ、「客観的な把握ができている」と判断できる方法を以下4つに分けて詳しく解説します。
- 始業・終業時間の記録
- 賃金台帳の調製
- 自己申告制への処置
- 書類の保存
2-1.始業・終業時間の記録
労働時間の適正な把握を行うためには、1日あたりの労働時間だけでなく、労働日ごとの始業時刻や終業時刻を、使用者が確認・記録する必要があります。
始業・終業時刻の確認および記録に当たっては、以下の方法が原則とされています。
- 使用者(実際に労働時間の状況を管理する権限を委譲された者を含む)が直接確認する方法
- タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間などによる客観的な記録方法
2-2.賃金台帳の調製
労働基準法第108条および同法施行規則第54条により、使用者は従業員ごとに、以下の事項を賃金台帳に適正に記入しなければなりません。
- 労働日数
- 労働時間数
- 休日労働時間数
- 時間外労働時間数
- 深夜労働時間数
賃金台帳にこれらの事項を記入していない場合や、故意に賃金台帳に虚偽の労働時間数を記入した場合は、30万円以下の罰金が科される恐れがあるため注意しましょう。
2-3.自己申告制への処置
客観的な方法による労働時間の把握が難しい場合は、やむを得ず自己申告による方法も認められることがあります。
ただし、自己申告による方法が認められるケースは限定的であると考えていいでしょう。
また、自己申告による方法が認められる場合に該当しても、実際に自己申告した内容が認められるためには、非常に多くの説明・確認作業が必要となります。
できるかぎり、原則的な方法で労働時間を記録することをおすすめします。
2-4.書類の保存
労働基準法第109条では、「使用者は、労働者名簿、賃金台帳および雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならない」と定められています。
「その他労働関係に関する重要な書類」に該当するのは、以下のような書類です。
- 使用者が自ら始業・終業時刻を記録したもの
- タイムカードなどの記録
- 残業命令書およびその報告書
- 従業員が自ら労働時間を記録した報告書
保存期間にあたる3年間は、「最後の記載がなされた日」を起算点としてカウントします。
なお、この保管義務を怠たると、30万円以下の罰金が科される恐れがあるため注意しましょう。
3.労働時間把握のために企業がすべき対応
労働時間の客観的な把握義務について理解し、実際に処置を行わなかった場合は、罰則が科される可能性があることがわかりました。
労働時間の客観的把握をより正確に行うために、具体的に企業が取り組むべきことは、次の3つの事項です。
- 勤怠管理ツールの導入・見直し
- 残業申請方法の見直し
- 労働時間把握の目的や方法の周知
以下、それぞれを詳しく解説します。
3-1.勤怠管理ツールの導入・見直し
これまでは、紙の出勤簿やエクセルシートを使用し、従業員の自己申告方式で勤怠管理を行ってきたという企業もあるでしょう。
しかし、従業員が記載した出勤簿を確認し押印するという形では、何らかの事情により、実際の就業時刻と異なった時刻が記載されていた場合でも、使用者はそれに気がつくことができません。
よって、労働時間を客観的に把握するためには、ICタイムカードやクラウド管理システムといった、勤怠管理ツールの導入がおすすめです。
ICカードやクラウド管理システムの導入には、以下のようなメリットがあります。
- 出退勤時間をデータ化し、集計事務の効率化を図ることができる。
- 代理打刻や打刻ミスのリスクを減らすことができる。
- 現時点での労働時間数を確認できるため、時間外労働時間の上限を越えないよう事前に調整できる。
3-2.残業申請方法の見直し
従業員が自由に残業時間を決定できる職場では、故意であったか否かにかかわらず、時間外労働時間の上限を超えて働いてしまい、法令違反となる可能性があります。
こうした事態を避けるためには、残業申請方法の見直しが必要でしょう。
実際に、残業時間を事前承認制にすることで、適切な労働時間管理を図る企業も増えています。
事前承認制では、従業員が事前に申請していた時間を超えて仕事する場合、その残業の可否と長さについて、上司か担当者の許可を得なくてはいけないというルールを設けている場合もあります。
3-3.労働時間把握の目的や方法の周知
安全衛生法第101条では、従業員に対する使用者の指示に関する法令などの周知義務が規定されています。
使用者は、法律およびこれに基づく命令の要旨を、常時各作業場の見やすい場所に掲示、または備え付けなければなりません。
パソコンからいつでもチェックできるよう、PDFデータなども用意しておくといいでしょう。